通常保存vs超音波熟成|House IPA(志賀高原ビール)で瓶内熟成の違いを飲み比べ

志賀高原ビールの大人気インペリアルIPA「House IPA」。
今回は同じ瓶詰日(2022/4/22)のボトルを2本用意して、1本は通常の冷蔵保存、もう1本は超音波熟成器「速熟香果」を使っいつつ冷蔵保存で2週間瓶内熟成させたら、どれくらい味が変わるのかを試してみました。

クラフトビール界隈では「ビールは振動に弱い」「輸送直後は少し落ち着かせてから飲んだ方がいい」とよく言われます。
一方で、超音波熟成器は“超音波=高周波の機械的振動”を利用する道具です。
その二つが頭の中でつながって、 「ビールは振動に弱いって聞くのに、超音波当てて大丈夫なの?」 というモヤモヤもずっと抱えていたので、そのあたりも含めて軽く考えてみました。

超音波熟成器で瓶内熟成呑み比べ|House IPA|志賀高原ビール(株式会社玉村本店)|長野県

House IPA(志賀高原ビール)とは?

名称
House IPA
メーカー/販売元
志賀高原ビール(株式会社玉村本店)
産地
日本(長野県)
スタイル
インペリアル・IPA
アルコール度数
8.0%
IBU
95
特徴
大人気の準定番商品。

看板商品であるIPAの強力版です。

マリスオッター100%のベースに、これでもかというほどのホップを使ったこのビール。

8%の度数を感じさせないほどの爽快さが特徴の自信作。

スタイル  インペリアルIPA
ABV 8.0%
英国産最高級麦芽“マリスオッター”をふんだんにつかい、大量のホップで仕上げたインペリアルIPA。「自分たちの飲みたいビール」の代表格です。
圧倒的な香りと爽快な苦みで、度数を感じさせない“危ないビール”です。
House IPA|志賀高原ビール(株式会社玉村本店)|ラベル
感想

同一ロットのHouse IPAを「通常保存」と「超音波熟成」で比較

以前、2021.2と2019.6のHouse IPAを瓶内熟成で飲み比べしましたが、今回は
今回は同じ瓶詰日(2022/4/22)のHouse IPAを2本用意し、

という条件で飲み比べをしてみました。

「ビールは振動に弱い」と言われる理由と、超音波との違い

一般的にビールの保存で言われる「振動」は、輸送中のガタガタ揺れや、冷蔵庫の扉ポケットで出し入れされるような、 比較的ゆっくりした大きめの揺れ を指していることが多いと思います。
こうした低〜中周波の振動は、沈殿物が舞い上がったり、炭酸が抜けやすくなったり、香味のバランスを崩しやすいとされていて、
クラフトビールの保存解説でも「振動の少ない場所で」「輸送直後は少し落ち着かせてから」と書かれていることがよくあります。

一方で、超音波はざっくり言うと 「人間の耳に聞こえない領域の高周波の音(機械的振動)」 で、周波数も振れ幅もまったく別物です。
同じ「振動」の仲間ではあるものの、日常的に気にする「揺らし過ぎる振動」とはスケールも目的も違うので、
ここでは 「保存時に避けたい振動」と「実験的にかける超音波」は別物として割り切っている という前提で試しています。(おそらく、冷蔵庫に入れていても多少は振動してると思いますし)

あくまで個人的な解釈ですが、
・輸送的な振動 → ビールを劣化させる方向の要因
・超音波 → うまく使えば「なんちゃって熟成」のような別方向の変化を付ける道具
と捉えていて、本記事はその「超音波のほうを、1本だけで遊びとして試してみた」記録、という位置づけです。

超音波熟成とは?「もやしもん」の“100倍速熟成”の話

超音波熟成は、漫画「もやしもん」でもネタとして登場していて、
微弱超音波をお酒に与えることで自然熟成の約100倍の速さで熟成が進む…という話が第3巻に出てきます。
(あくまで漫画内の表現であり、科学的な実証までは自分も確認していません)

醸造酒のワインや日本酒は瓶内熟成が可能なので当然として、蒸留酒の瓶内熟成については「純粋な意味での熟成とは違う」という意見もあり賛否両論です。
とはいえ、自宅で遊びとして試してみる分には面白いので、個人的にはわりと気楽に使っています。

また、House IPAのように酵母をろ過・除去していないクラフトビールでは、微弱な超音波によって酵母が舞い上がり、微妙に瓶内発酵が促進される可能性もあるのでは?と妄想してみたり。
(あくまで個人の想像レベルで、実際にどうなっているかは不明です)

冷蔵保存の上、製造から90日間程度はフレッシュな味わいを、以降は熟成による変化をお楽しみ下さい。
House IPA|志賀高原ビール(株式会社玉村本店)|ラベル

2週間後のHouse IPAを飲み比べた結果

瓶詰日から約2ヶ月経過した段階で、通常保存ボトルと超音波熟成ボトルを飲み比べてみました。
驚いたことに、体感としてはけっこう違いが出ていました。

何もしていないほうのHouse IPAは、メリハリのあるフレーバーで、余韻はキリッと苦いまま。
一方、酒熟成器“速熟香果”を付けていたHouse IPAは、飲み口がまろやかになり、余韻もじわじわと苦味が広がっていくような印象でした。

もちろん、瓶詰日が4/22で2ヶ月ほど経過していたビールで試したため、超音波熟成器を付ける前から微妙にコンディションに差があった可能性もゼロではありません。
きっちりした科学実験というよりは、あくまで「1ケースの体験談」として読んでいただけるとちょうど良いと思います。
とはいえ、自分が飲んだ範囲では「通常保存のキリッとしたHouse IPA」と「超音波で少し角が取れたHouse IPA」というくらいの違いは感じられました。

超音波熟成とビールの付き合い方

好みは人それぞれですが、元来ホップフレーバーは時間経過とともに落ちていくので、通常はIPA=鮮度重視で飲むのがセオリーだと思います。
そのうえで、超音波熟成器を使うと、短期間で「なんちゃって熟成」的な変化を楽しめるので、上手く使えばホッピー(超音波によってホップフレーバーがどうなるかは不明ですが)で面白い一本ができそうだなという印象でした。

とはいえ、あくまで家庭用のガジェット+一本単位の体験談なので、「科学的にこう変わる」と言い切れるものではありません。
熟成による変化が好きな方は、自己責任で“実験用の一本”を用意して試してみるのもアリかもしれません。